アコヤ真珠

真珠の基礎

真珠ヒストリー

宝石の一種である真珠はダイヤモンドなどの鉱石とは異なり、生体がつくる鉱物であることから「生体鉱物」(バイオミネラル)とも呼ばれています。

貝をあけたそのままの姿で光り輝く美しさを持っていたことから、約5,000年の昔から世界中で宝石として高い評価を得ていたとされています。

その昔、孔子があらわした『尚書』には、紀元前2,206年(今から4186年前)に中国で淡水真珠を貢物に使用したとの記述が残されています。ヨーロッパでは、ローマ・ギリシャ時代から真珠はしばしば『聖書』に登場し、「天国は良き真珠を求めんとする商人のごとく、価高き真珠を見出さば、その所有物をことごとく売りてこれを買うなり」(新約聖書、マタイ伝)と記されています。まさに真珠は<地上最高の至宝>として、大昔から装飾品として愛好されていました。

さらに当時は天然から生まれる真珠を探すしかなかったため、その稀少性の高さから多くの王族や貴族の権勢を示すバロメーターとしての役目も果たしていました。1

※貴族や有力者の肖像に登場する真珠たち

現在でもダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドと並ぶ5大貴石(プレシャスストーン)として名前の挙がる真珠。そんな長い歴史を持つ真珠ですが、現代では冠婚葬祭だけでなくカジュアルな装いに取り入れられることも多くなり、広く女性たちに親しまれるようになりました。真珠を使用した装いが多様化した原点は、一般的に20世紀前半にココ・シャネルがイミテーションパールを取り入れたコレクションを発表したことにさかのぼるといわれています。ココ・シャネルはそのセンセーショナルな感性で女性の日常のおしゃれを提案し、そしてそれに真珠を取り入れた先駆者でした。2

真珠の定義

ところで、昨今ブームが再燃し、耳にする機会の多くなった“模造真珠(イミテーションパール)”。本物の真珠(ここでは便宜的に“真珠”としています)と比較するとコットンパールなどの一目で違いがわかるものもあれば、一見本物かと見紛うほどよく似たイミテーションパールも存在します。イミテーションパールと真珠の違いはその値段や重さ、質感によって目に見える形で現れますが、最も本質的な違いはその生い立ちにあります。ここでは、業界で定める真珠の定義をご紹介します。

業界で言われる真珠とは「真珠層を形成することが出来る生きた貝から採取され、視認できる部分の成分が、母貝の内側と同質であるもの」と定義されています。アワビやカキ・黒蝶貝や白蝶貝のように貝の内側が光っている“生きた貝”から生まれていること、貝の内側の光っている部分―“真珠層”と呼ばれる光沢のある層が、真珠全体に巻いていることが真珠の条件となっています。

※黒蝶貝の内側と、黒蝶真珠

真珠層の仕組み

真珠は、貝殻の内側の光っている部分と同じ成分の真珠層が核に巻き付くことで作られています。母貝は異物からの防御反応で、核を回転させながら異物(核)に1層ずつ真珠層を重ねます。その期間が長くなればなるほど(浜揚げまでの時間が長くなるほど)真珠層の数が多くなり、結果、真珠層全体の厚さも増え、真珠のサイズも大きくなっていきます。母貝や核がもともと大きなものもあるため真珠全般とは言えませんが、一般的にはサイズの大きな真珠ほど、長い期間母貝の中で育てられたものということになります。

■真珠層をつくる“炭酸カルシウム”と“たんぱく質”

真珠層そのものは真珠全体の95%を占める炭酸カルシウムの結晶とコンキオリンという硬化たんぱく質から成り立っています。

表面を拡大すると、細長い六角形の形をした炭酸カルシウムの結晶が、レンガのように規則正しく並んでいることがわかります。そのレンガをのり付けする役割として、硬化たんぱく質が網目状に存在します。そして炭酸カルシウムの結晶が並ぶ層と層同士を糊付けする硬化たんぱく質の層が交互にミルフィーユのように重なることで、真珠層は形成されていきます。

※黒蝶真珠表面の拡大図

※真珠層と光の反射

また硬化たんぱく質自体は光の透過性が低いという特徴があるため、量が多くなるほど光が反射されず、真珠のテリが無くぼんやりとした印象になってしまいます。

よって、糊付けの役割を果たす硬化たんぱく質がなるべく少ない状態―光を透過し、反射する炭酸カルシウムの結晶の形がそれぞれに大きく形も均等で、隙間なく並んでいることが、質の良い真珠層の条件となります。そして質の良い真珠層が何層も巻くことによって内側から反射する光も多くなり、真珠の輝きは増していきます。

※真珠層全体の厚さと輝きの関係 養殖期間:(左)約6か月(右)約24ヶ月

■「真珠はテリが命」

質の良い真珠層が何層にも重なり、反射する光が多くなるほど真珠独特の美しい輝きが増していきます。そして真珠独特の輝きのことを、業界用語では「テリ」と呼んでいます。 しかしながらここで言われる「テリ」とは、実は単純に真珠の輝きだけを指しているのではありません。小松博先生監修の『真珠辞典』には以下のように記されています。

『宝石の美しさの基準は人によってさまざまですが、一般的には、「カット」「形」「色」「透明度」「光沢」という光学効果の5つを基準としています。五大宝石に挙げられた宝石はそれぞれ魅力的な光学効果があらわれることでも共通しています。(中略)ルビーやサファイアに見られるアステリズム(スター効果)などの美しい光学効果を生むこともあります。 そして、品質の良い真珠には、強い「テリ」 があらわれます。この 「テリ」は鉱物宝石の光沢とは異なり、輝きを伴った色、つまり干渉色を指します。 これは、真珠を形成する結晶層が整然と積み重なることで生まれる、光の干渉によるものです。 この光学効果こそが、真珠が美しい宝石として讃えられる最も大きな理由ではないでしょうか。』3

黒蝶真珠は、周縁が緑、内側が赤色という「ピーコックカラー」と呼ばれる代表的な色が存在します。これは、真珠層1層に含まれる色素が光と共に反射し、それが何層にも積み重なることによって生まれる光の重なり―色の重なりがもたらすものです。この美しい干渉色―「テリ」の現れる真珠は、真珠層の質がとても高く、丈夫で長持ちする良い品質の真珠であることの証明ともいえます。真珠屋さんがよく「真珠はテリが命」という所以は、ここにあるのです。

※黒蝶真珠代表色といわれる「ピーコックカラー」

※はっきりとしたテリの黒蝶真珠

※ややぼやけたテリの黒蝶真珠

※ぼんやりとしたテリの黒蝶真珠

真珠の評価

真珠を評価するとき、その評価項目は「テリ」「巻き」「表面」「キズ」「形」「色」と全部で6項目あります。これらの項目をふまえた総合点が真珠の評価となります。

「テリ」…真珠の命ともいわれる、表面の艶と輝き・干渉色のあらわれのこと。真珠を横から見たときに、真珠の外淵と内側の色の違いがはっきり見える真珠こそ、テリの良い真珠といえます。
「巻き」…真珠層の数を指します。美しい真珠層を数多く巻くためには恵まれた環境と真珠を養殖する人の努力を必要とします。巻いた真珠層の数が多いほど、評価が高くなります。
「表面」…表面の状態にムラ、しわがないかなどを指します。全体の表面が滑らかなら高い評価となり、ムラやしわが多いほど評価が低くなります。覗き込むと自分の目鼻が写るものが良いとされます。
「キズ」…針でつついたような1点キズは真珠の“えくぼ”とも称されます。生き物が作る宝石のため、真珠を巻く段階で表面に小さな穴が開いてしまったり、擦り傷のような凹みがあらわれたりすることがあります。ほとんどの真珠にはこのようなキズがあり、キズの無いものほど評価が高くなります。
「形」…「真珠とは丸いもの」と言われるように、球形を表すラウンドや、雫型のドロップ、ボタン、ケシやスムースなど真珠の形によってさまざまな呼称があります。最近では平らな形のフレークや不規則な形のバロックなども人気が出ています。
「色」…母貝の色に依存するため、様々な色が存在します。アコヤ真珠は大まかに黄色や薄い桃色が多いですが、黒蝶真珠などは無限の色彩を持っていることでも知られています。

真珠の処理

真珠の加工処理には大きく分けて「真珠本来の美しさを引き出すための処理」、「美しさをより付け加える処理」の2つがあります。

前者の場合は良くお化粧にも例えられますが、 ① その後の工程で主に溶剤を染み込みやすくする意図で行われる「前処理」
② アコヤ真珠では、溶剤を染み込みやすくさせる為に真珠にドリルで穴を開ける「穴あけ」
③ 核と真珠層の間に入り込んだ不純物を除去するための「染み抜き」
④ タンパク質の色素を除去するための「漂白」
真珠本来の色を引き出すためにアルコールの溶剤を用いて弱い染料を染み込ませる「調色」
といった処理を行います。

後者の場合は美容整形に例えられることもありますが、①~④の後にさらに強い染料や硝酸銀などの化学反応で真珠の色を変える着色処理や、汗や酸から真珠を守ったり、真珠表面のテリを増したりするコーティングなどを行うことを指します。

現在市場に出ているアコヤ真珠の殆どは、真珠本来の美しさを際立たせるための化学処理が施されています。(水産庁編集の「真珠―水産時報特集号」(昭和33年発行)によると、加工せずに使用できるアコヤ真珠の割合は15%程度とされています。)

清美堂真珠の信念

清美堂真珠では、美しい真珠とは「きめ細やかで透明感のある真珠層が数多く巻いている真珠」であると考えています。それは、真珠の命である「テリ」と「巻き」を最も重視していることに他なりません。
良いテリは良質な真珠の証。良質な真珠は、長い年月が経過しても色が褪せたり、テリが落ちたりすることはありません。むしろ不思議なことに、清美堂真珠では、真珠の品質が高いものほど時間の経過とともにテリが増していく現象さえあります。

加えて清美堂真珠では黒蝶真珠・白蝶真珠は全て天然色で、前処理を含めた調色や染色処理といった化学処理を一切施しておりません。加工を加えてしまうと真珠の繊細な構造が不安定になり、外部からの刺激で想定外の品質の変化を招く恐れがあるためです。生れたままの上質な真珠はどんな加工をせずとも逞しい生命力にあふれ、美しい輝きを放っていると私たちは考えます。

お客様と共に長い年月を過ごす真珠が、手にしたときと同じ品質を保つこと。
真珠の物語を皆様にお伝えする会社として、お客様の手に渡るまでの品質を保証することは私たちの使命であり、お客様からの信頼が私たち清美堂真珠の誇りです。

[1]『真珠』白井祥平著 海洋企画
[2] [3] 『真珠辞典 真珠、その知られざる小宇宙』小松博監修 白子修男発行 繊研新聞社

アコヤ真珠

■日本原産のアコヤ真珠

アコヤ真珠は通称和珠とも呼ばれ、日本原産のアコヤ貝(学名:Pinctada fucata martensii)を母貝とする真珠です。

アコヤ貝は黒蝶貝や白蝶貝と比較すると小柄で、採取されるアコヤ真珠も中心的なサイズは直径約6~7mm、最も大きい珠でもおよそ12mmとやや小ぶりです。

※(写真左)黒蝶貝と黒蝶真珠 (写真右)アコヤ貝とアコヤ真珠

そんなアコヤ真珠最大の特長は、真珠のテリを決定づける真珠層1層が他の真珠と比較してたいへん薄く、緻密であることです。きめ細やかで透明感のある真珠層は美しいテリを生み出すため、その気品のある輝きと柔らかな色味は日本人だけでなく世界中の女性達を虜にしています。

■アコヤ真珠の生産地

かつて養殖技術の発達していない時代から日本で多くの美しい真珠を採取することができていたのは、母貝としてのアコヤ貝にとって日本の四季は非常に相性が良かったためではないかと考えられています。四季がもたらす程よい海水温の寒暖差と日本海流や対馬海流などによって運ばれる豊富な栄養がアコヤ母貝のバイオサイクルに良い刺激をもたらし、きめ細やかで引き締まった質の良い真珠層を持った真珠を育むのでしょう。

さて、アコヤ真珠の主な産地は日本の他にベトナムがありますが、日本原産のアコヤ貝を輸出して生産されています。本場日本国内では日本有数の真珠どころである三重をはじめとした西日本を中心に養殖されています。

<西日本の主な産地>
① 三重県:神明・片田・布施田・船越
② 愛媛県:遊子・北灘
③ 福岡県:相島
④ 佐賀県:唐津
⑤ 大分県
⑥ 熊本県:天草
⑦ 長崎:津島・壱岐

産出される真珠はそれぞれの養殖場によって特徴があります。例えば愛媛県の遊子や北灘は安定して大きな真珠が取れますが、一方で三重の片田、布施田、船越は厘球といった4mm以下の小さな真珠を主に生産しています。また長崎県の対馬や壱岐は天皇賞を受賞するなど多数の受賞歴を持つ良い養殖場があることでも有名です。

余談ですが、関東圏のお魚でごちそうと言えばマグロが思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。一方関西圏では、ごちそうと言えば鯛なんだとか。福岡の天然鯛の水揚げ量は国内屈指を誇り、鳴門海峡や、明石海峡、宇和島の養殖真鯛も有名です。西日本を中心に養殖されるアコヤ貝と鯛は、生息条件の共通点が多いのかも知れません。

■アコヤ真珠の色は何色?

ショーウィンドウに飾られているアコヤ真珠は、殆どがホワイト系ではないでしょうか。しかしながら、実は海から取れたばかりのアコヤ真珠は1つとして同じ色がないほど千差万別で、ピンク系、シルバー系、クリーム系、ゴールド系、グリーン系、ブルー系、ブラック系の7つに区分されるほど、色彩豊かな真珠です。それでもホワイト系が根強い人気を誇るのは、「真珠は白くてまるいもの」というイメージがあるためかもしれません。

※浜揚げ時のアコヤ真珠

※ややピンクがかったホワイト系のアコヤ真珠

■アコヤ真珠ヒストリー

アコヤ真珠と日本の歴史は古く、「魏志倭人伝」によると正始8 (247)年~9年に、魏・呉・蜀の三国を統一した晋に、倭国の女王老與(イヨ)が大掖邪狗(たいふえきやく)等を遣わし、男女生口30人を献じるとともに白珠5千孔、青人句珠2枚などの貢物を届けたとあります。当時倭国は古墳時代に入った頃で、白珠は真珠、青大句珠は翡翠の大きな勾玉と考えられています。  水産資源の豊かな島国である日本は古代から海の宝石である真珠の価値を見出し、大切にしてきたことがわかる一節です。

また、かつてMIKIMOTOの創設者である御木本幸吉が明治天皇に謁見した際、「世界中の女性の首を真珠でしめてごらんにいれます」とその思いを強く訴えた 逸話があります。今や世界中の女性達が日本で生まれたアコヤ真珠の気品あふれる美しさを理解し、様々な装いに合わせて楽しんでいます。御木本幸吉の真珠への情熱とたゆまぬ努力が、まさに宣言通りの結果をもたらしているのでしょう。



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